トランプ大統領はそんなにヤバい奴なのか? 歴史から読み解く

ぬもくねぬもくね

去る1月20日、アメリカ合衆国大統領にドナルド・トランプ氏が就任した。

大統領選時から過激な発言を連発した氏も、就任すれば落ち着くかと思われた。

が、就任直後から大統領令を連発。イスラム系国家7カ国の人間の入国一時停止などに署名し、いまだ内外からファシスト・独裁者・差別主義者、はたまた戦争を起こそうとしているなどと罵られ批判されている。

「ヤバい奴が大統領になった」。そういうイメージがどこか漂っている。

しかし、彼はそんなに「ヤバい奴」なのか。歴史をみれば、そうでもないかもしれない。

まず彼の口にするフレーズで一番印象的なアメリカ第一主義、アメリカファースト。

しかしアメリカ第一というのは言うまでもなく当然であり、どんな大統領であろうと、共和党であろうと民主党であろうと同じことである。アメリカ第一だから戦争に介入もしたし、アメリカのため世界の警察も担ってきた。アプローチの仕方の問題であって、アメリカ第一という発言は何もおかしなことではない。

そして国防。彼は世界の警察をやめ、西側諸国への防衛力提供をやめるようなことも言い、文字通りアメリカだけを守ろうとしている。

しかしアメリカという国はそもそも20世紀初頭、一次大戦まではいわゆるモンロー主義の国であり、アメリカは好きにするから他も好きにしろというスタンスが基本だった。世界一の超大国になったのは一次大戦後のことであり、国際問題への介入も冷戦期以降に顕著になったもの。「世界の警察」として世界中に睨みを聴かせるようになったのはソ連崩壊後、ブッシュ氏からクリントン氏の頃のことである。

それを考えればトランプ氏の意見はとてもアメリカらしいものであり、決して突飛なものではないのだ。

さらに人種差別とも批判される数々の発言。

しかし歴史を見ると、例えば二次大戦期における大統領フランクリン・ルーズベルトは枢軸国の移民を適性外国人として強制収容、特に日本人・日系人においては12万人を強制収容している。もっともこれは戦時下の話なので、自国の安全のため必要だった面もある。度が過ぎたのかもしれないが。

そしてかのエイブラハム・リンカーンも、黒人奴隷解放を訴えたものの、ネイティブアメリカンに対しては強制移住や虐殺を推し進めた裏の顔がある。

たしかにトランプ氏の政策はある種人種差別的とも見えるが、自国の安全のためある種やむを得ない部分もあるのだろう。ただ「人種差別だ!」と批判すればいいだけの問題ではない。

さらには、どこからか聞こえる「トランプのせいで第三次世界大戦が起こる!」という声。

しかし歴史を見れば、例えば一次大戦は列強各国の相互安全保障と威嚇のための軍事行動がピタゴラスイッチのように連鎖反応を起こし、あれよあれよという間にいつのまにか世界大戦になったのであり、二次大戦はドイツの一次大戦後の体制への否定と明らかな東方への領土的野心が引き金になっている。さらに言えば本来第三次大戦となると思われた冷戦期はあきらかな東西間のイデオロギー対立があった。

いまアメリカは特にどこかとイデオロギー対立をしているわけでもなく、どこかの独裁国家が領土拡張のためあからさまに軍備拡張をしているわけでもない。さらに言えば一次大戦のようにパワーバランスの複雑な列強国家がこれまた複雑な同盟関係・安全保障関係を結んでいるわけではない。

トランプ氏のせいでどう第三次世界大戦が起こるのか教えてほしいくらいである。

つまり、冷静に歴史を見れば、そして彼の発言を見れば、そんなにヤバいことを言っているとは言えないのだ。

たしかに入国一時停止令は混乱と反発を招いている。だがたとえば日米安保に関しては、先日の日米首脳会談にて

「アメリカ軍を受け入れてくれてありがとう」

と発言している。これから彼ドナルド・トランプ氏は、柔軟に現実を受け入れ大統領として成長する可能性を秘めているのだ。

「反トランプ!」と感情的に否定する意見が世界中に多い中、今こそ冷静に彼を見つめるべきなのだ。