NHK「ストップ恋愛」動画が絶対に許されない理由

上永 顕理上永 顕理
匿名クラブ 代表理事理事長

日本放送協会(NHK)が、11月4日から「ネットで決戦!#(笑)動画作ってみた」という企画を行っています。

これは「絶対笑える、三分動画」というお題で制作された五つの動画の人気投票を行い、その全ての過程をBSの番組として放送するという内容の企画です。

その動画の一つに、「若者に蔓延する、恋愛の恐ろしさを啓蒙する」というテーマの作品があります。「ストップ恋愛!ゼッタイダメ」をスローガンに、恋愛によって起こるいくつもの弊害を紹介していく内容です。

この動画はインターネット上で注目を集めており、好意的な評価が数多く寄せられています。

ところが、調べたところ、NHKの紹介ページに「企画演出」として名が載っている「藤井亮」なる人物は、株式会社電通のマーケティング・クリエーティブ センター所属のアートディレクターであることが分かりました。

先に進む前に、まず現代の恋愛について簡単に見ていきましょう。

評論家の本田透氏によると、現代の恋愛は商品化され、消費行動に結び付けられているものであるといいます。このシステムはを本田氏は著書「電波男」(三才ブックス)の中で「恋愛資本主義」と呼び、これは電通をはじめとした広告代理店とマスメディアが支配しているシステムであると喝破します。

このような状況における「恋愛」に真の愛が無いことは「アンチ・バレンタイン」(筆者責任編集、デザインエッグ社)で述べた通りですが、つまるところ現代の日本で常識とされている「恋愛」は、電通を筆頭とする広告代理店・マスメディアが創出した商業的なものであるということです。

さて、「ストップ恋愛」動画に話を戻しましょう。

恋愛資本主義思想と絡めて話をまとめると、「恋愛」のイメージを作り出し、今なお様々な形でそれを布教しているのが電通であるにも関わらず、当の電通から「恋愛」を批判するコンテンツが登場したということになります。

では、これは電通による、いわば「自己批判」的行為と考えるべきなのでしょうか。

私にはそうは思えません。新入社員の命さえも金のために消し去ってしまう伏魔殿・電通が、まさかそんな事をするはずがありません。

先程取り上げた「電波男」のヒットや、2008年の「非モテSNS」の登場からも分かる通り、非モテ的コンテンツもまた金を集めるものとなってきています。金のためなら何でもする電通が、私達非モテの岡焼き心理を商売のタネにしようと画策し始めた。そう考えれば、今回の「ストップ恋愛」動画も理解できるでしょう。

大きな市場とは言い難い世界ではありますが、インターネット上に多くいる非モテ達の注目を浴びることの出来るコンテンツであることに間違いはありません。「草食系男子」などの言葉が象徴する若者の恋愛離れによって、従来の恋愛キャンペーンの効果が減退していけば、彼らは次の手を打つに違いありません。 この動画はあくまで藤井氏個人の作品ですが、企業によるこのようなコンテンツは次第に増えていくかもしれません。勿論、電通の策謀によって、です。

電通みずから作り上げた「恋愛」を、みずから壊していくポーズをとる欺瞞的な戦略は、おもしろさの皮をかぶったプロパガンダにより、次第に社会を侵食していきます。結果として訪れるのは、モテも非モテも、およそ男女関係に関するすべてがすべてが商品化されたディストピアです。

男女の関係というものは人類誕生以前から存在するものです。したがって、正しい男女関係なるものはそもそも定義できないものだと考えます。だからこそ、「男女関係=恋愛とはかくあるべし」と決めつけるような妄言を吐き、恋愛関連のもの全てをを資本主義に基づき商品化して単なる経済の歯車の一つにまで低める独善的愚挙は絶対に許してはならないのです。全く正解のない問題であるからこそ、個々人一人ひとりがメディアに惑わされずに、固定観念を捨てて向き合っていくべきものなのではないでしょうか。

(2016年11月23日:見出しを変更しました。)